『神の子』 薬丸岳さん著|あらすじ・レビュー

『神の子』 薬丸岳さん著|あらすじ・レビュー

神の子(上)

(★4.2)
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今回は、心をえぐられるような問いを突きつけ、読んだ後も深く考えさせられる社会派ミステリーの傑作、薬丸岳さんのミステリー小説『神の子』をご紹介します。

神の子』について

『神の子』は、2016年 光文社から発行された薬丸岳さんの長編ミステリー小説。

少年犯罪という非常に重いテーマを扱いながらも、ページをめくる手が止まらなくなる圧倒的なストーリーテリング。

読み終えた時、あなたは何を感じるでしょうか。

『神の子』登場人物

町田博史(まちだ ひろし):主人公 天才的な頭脳(IQ161以上)を持ち、戸籍も家族もなく育った孤独な少年

小澤稔(おざわ みのる):知的障害のある少年 町田が心を許せる存在

雨宮一馬(あまみや かずま):町田と同じく殺人の罪で少年院に入った巨漢の少年 姉は雨宮美香 

磯貝:町田が少年院に入る前、詐欺グループで共謀していた仲間

室井(むろい):町田や磯貝が関わった詐欺グループのボス

内藤信一(ないとう しんいち):少年院の法務教官

為井純(ためい じゅん):大手ドラッグチェーンの御曹司 町田、夏川、繁村と一緒に会社を設立

『神の子』あらすじ

少年院入所時の知能検査でIQ161以上を記録した町田博史。

戸籍すら持たぬ数奇な境遇の中、他人を顧みず、己の頭脳だけを頼りに生きてきた。

そして、収容された少年たちと決行した脱走事件の結末は、予想だにしなかった日々を彼にもたらすこととなる――。

一方、闇社会に潜み、自らの手を汚さずに犯罪を重ねる男・室井は、不穏な思惑の下、町田を執拗に追い求めていた。

吉川英治文学新人賞作家が描く、エンタテインメントの醍醐味を存分に詰め込んだ圧倒的傑作!

Amazonより引用

『神の子』は、IQ161以上の天才的頭脳を持つ少年・町田博史を主人公とする社会派サスペンス。

戸籍を持たず、他人への感情をほとんど持たずに生きてきた町田は、殺人事件の容疑で少年院に入所。

院内の少年たちと脱走事件を起こし、その後、彼を執拗に追う闇社会の男・室井や、少年院の法務教官・内藤らとの出会いを通じ、戸惑いながらも新たな人生に向き合うこととなります。

大学に進学し、仲間とともに会社設立にも関わる町田ですが、過去の影は常に彼の背後に付きまとい、物語は予想もつかない展開へと進んでいきます。

『神の子』レビュー・感想


ページをめくる手が止まらないジェットコースター的な展開が魅力で、少年犯罪の厳しさと人の成長、そして人間の持つ孤独や温かさが丁寧に描かれています。

町田の非情なほどクールな視点から「生きること」「信じること」「赦すこと」を巡る心理描写は圧巻で、読者はつい主人公と一緒に葛藤や希望を味わってしまうことでしょう。

また、脇を固めるキャラクターも多彩で、物語後半、町田の変化やその要因となる他者との出会いに心が揺さぶられます。

「ミステリー」という枠を超えた社会ドラマとしての深みも特徴です。

著者「薬丸岳」さんについて

『神の子』の著者、薬丸岳さんは1969年生まれ、兵庫県出身の小説家です。

2005年に『天使のナイフ』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。

2016年に「Aではない君と」で吉川英治文学新人賞を受賞。

代表作に『天使のナイフ』『Aではない君と』『友罪』『神の子』などがあります。

『神の子』を読んだ最後に

『神の子』とは一体何を意味していたのか、読み終えた後に改めて問いかけたくなる余韻が残ります。

人間の可能性、赦しとは何か——テーマは重いですが、読了時には静かな感動と“生きていく力”をもらった気持ちにもなりました。

善悪のシンプルな二元論とは違い、困難な環境下でもあがく主人公たちの姿が、今を生きる全ての人へメッセージを送ってくれる、そんな一冊です。

神の子(上)

(★4.2)
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