
模倣犯
(★4.2)
日本を代表するミステリー作家・宮部みゆきの『模倣犯』は、新聞連載時から多くの読者を魅了し、出版後も第55回日本推理作家協会賞を受賞した傑作です。
東京で起きた連続殺人事件を軸に、複数の登場人物の視点から事件の真相に迫るこの作品は、単なるミステリーではなく、現代社会における人間の業や欲望、そして絆までをも描き出しています。
本記事では、『模倣犯』の魅力を徹底解剖し、なぜこの作品が多くの読者を虜にし続けるのかをお伝えします。
目次|Contents
『模倣犯』について
『模倣犯』は、1995年から1996年に新聞で連載された長編ミステリー小説で、2001年に新潮社から単行本として刊行されました。
この作品の最大の特徴は、その複雑で壮大なストーリー展開にあります。
東京で発生した連続殺人事件を中心に、事件の関係者たちが織りなす人間ドラマが絡み合い、読者の予想を次々と裏切ります。
宮部みゆきは、綿密な調査と取材に基づいた現実感のある描写で、事件の謎だけでなく、登場人物たちの心理や動機まで緻密に描きました。
また、この小説は新聞連載という形式を最大限に活用し、各回ごとに読者を惹きつける工夫が施されています。
それでいながら、全体として一つの大きな物語として成立する構成の巧みさは、宮部みゆきの作家としての力量を存分に示しています。
『模倣犯』登場人物
ピース:進学塾講師 人気者の青年 ヒロミ、カズアキの同級生
ヒロミ:カズアキの幼馴染
カズアキ:ヒロミの幼馴染
『模倣犯』あらすじ

墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。
やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。
ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった――。
未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔。
Amazonより引用
東京で、連続して若い女性が殺害される事件が発生します。
警察は必死に犯人を追いますが、一向に容疑者にたどり着きません。
事件は複雑に絡み合い、容疑者と思われていた人物が実は別の事件に関わっていたり、一見無関係だと思われていた登場人物が意外な形で事件に繋がったりと、謎は解けるどころか深まっていきます。
新聞記者としてこの事件を追う人物、事件の関係者となった人物たち、そして事件の真犯人と考えられる人物たちが、それぞれの思いと目的を持ちながら東京という大都市を舞台に動きます。
やがて、事件の真実に到達しようとしたとき、読者を驚愕させる真相が明かされます。
この衝撃的なラストは、それまでの物語の見方を大きく変え、読者に深い思索をもたらします。
『模倣犯』レビュー・感想

『模倣犯』を読んだあと、そのストーリーの複雑さと、登場人物たちの心理描写の深さに驚嘆しました。
特に、ラストの予想外の展開に驚きました。宮部みゆきは、読者の期待を巧妙に裏切りながらも、その展開が必然的で説得力があるという、難しい技法を見事に実現させています。
この作品は単なるミステリーではなく、現代社会における人間関係や欲望、そして普通の人間が持つ暗い側面までをも描いた人間ドラマです。
事件の謎を追うだけでなく、登場人物たちの葛藤や成長を通じて、人間とは何かについて考えさせられました。
著者「宮部みゆき」さんについて
宮部みゆきは、1960年生まれの日本を代表するミステリー作家。彼女のキャリアは多岐に渡り、現代ミステリーから時代ものまで、様々なジャンルの作品を手がけています。
『火車』『理由』『模倣犯』など、多くの傑作を生み出し、直木賞、日本推理作家協会賞、日本SF大賞など、数多くの文学賞を受賞しています。
彼女の作品の特徴は、何よりも綿密な取材に基づいた現実感と、複雑な人間関係を描く力にあります。
映像化作品も多く、テレビドラマや映画化を通じて、さらに多くの人々に彼女の作品を知ってもらう機会を作っています。長年に渡って作家活動を続け、常に高い水準の作品を発表し続けている彼女は、現代日本文学を代表する作家の一人として認識されています。
『模倣犯』を読んだ最後に
『模倣犯』は、長編であり、読み進めるのに相当な時間を要します。
しかし、その時間をかけて読む価値が十分にある、日本のミステリー文学を代表する傑作です。
複雑なストーリー、魅力的な登場人物、そして何より衝撃的なラスト。
これらすべてが合わさることで、読者に強い印象と深い思索をもたらします。
ミステリーが好きな方はもちろんのこと、人間ドラマとしての作品を求めている方にも、ぜひ一度読んでいただきたい一冊です。
『模倣犯』を通じて、宮部みゆきの作家としての力量を存分に感じることができるでしょう。
そして、この作品を読んだ後、あなたの「人間」「社会」「正義」といった概念に対する見方が、少なからず変わるかもしれません。
今こそ、東京を舞台に繰り広げられる、この傑作ミステリーの世界へ飛び込んでみてはいかがでしょうか。

模倣犯
(★4.2)

