衝撃のデビュー作「屍人荘の殺人」― ミステリー界を震撼させた前代未聞のトリック|あらすじ・レビュー

衝撃のデビュー作「屍人荘の殺人」― ミステリー界を震撼させた前代未聞のトリック|あらすじ・レビュー

屍人荘の殺人

(★4.0)


2017年、ミステリー界に衝撃が走った。

新人作家・今村昌弘が放った『屍人荘の殺人』は、第27回鮎川哲也賞を受賞し、さらに「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」の国内ミステリーランキングで三冠を達成。「絶対に、ネタバレ厳禁」というキャッチコピーとともに、多くの読者を魅了し続けている。

本格ミステリーの伝統を守りながらも、誰も予想できなかった斬新な設定。

密室、孤立した館、そして次々と起こる殺人事件──古典的なミステリーの要素が揃いながら、その真相は読者の想像をはるかに超えていく。

一度読んだら忘れられない、ミステリー史に残る傑作について、ネタバレに配慮しながらご紹介していきたい。

『屍人荘の殺人』について

『屍人荘の殺人』は、今村昌弘による長編ミステリー小説であり、2017年に東京創元社から刊行された。

作者のデビュー作でありながら、第27回鮎川哲也賞を受賞し、発売直後から大きな話題となった。

本作の最大の特徴は、「ネタバレ厳禁」というキャッチコピーにある。

物語の核心部分が明かされると作品の驚きが半減してしまうため、出版社も書店も徹底的にネタバレを避けるという異例の展開となった。この戦略は功を奏し、読者の間で「とにかく何も知らずに読んでほしい」という口コミが広がっていった。

舞台は、神紅大学ミステリ愛好会の合宿が行われる紫湛荘という山奥の宿泊施設。

古典的な「クローズドサークル」という設定を用いながらも、その展開は従来のミステリーの常識を覆すものとなっている。

映画化もされ、神木隆之介主演で2019年に公開された本作は、ミステリーファンのみならず、幅広い層に支持される作品となった。

『屍人荘の殺人』登場人物

葉村譲:主人公 神紅大学ミステリ愛好会 部員

明智恭介:神紅大学ミステリ愛好会 会長 自称「神紅のホームズ」

剣崎比留子:事件を「引き寄せる体質」を持つ女子大生

『屍人荘の殺人』あらすじ

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、いわくつきの映画研究会の夏合宿に参加するため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。

合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。

緊張と混乱の一夜が明け――。

部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。

しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!!

究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り、謎を解き明かせるか?!

奇想と本格が見事に融合する選考員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作。

Amazonより引用

神紅大学ミステリ愛好会の会長・明神に誘われ、葉村譲は山奥の紫湛荘で開かれる合宿に参加することになる。

同じく参加することになったのは、探偵を自称する謎の美少女・剣崎比留子だった。

紫湛荘には、ミステリ愛好会のメンバーのほか、映画研究部の学生たちも合宿に訪れていた。

初日の夜は何事もなく過ぎたが、翌朝、信じられない事態が起こる。

外部との連絡が完全に遮断され、紫湛荘は完全な「クローズドサークル」と化す。

そして、そこで次々と人が死んでいく。

密室、血痕、不可解な状況証拠──本格ミステリーの王道展開が続く中、葉村と剣崎は真相究明に乗り出す。

しかし、この事件には誰も予想できない「ある秘密」が隠されていた。

その真相が明かされたとき、読者は驚愕することになる。

すべての伏線が回収され、緻密に構築されたトリックの全貌が明らかになる瞬間は、圧巻の一言だ。

『屍人荘の殺人』レビュー・感想


『屍人荘の殺人』は、まさに「ネタバレ厳禁」という言葉がふさわしい作品だった。

読み始めは古典的な本格ミステリーの雰囲気を持ちながら、物語が進むにつれて「何かがおかしい」という違和感が募っていく。

そして、真相が明かされる瞬間の衝撃は、これまで読んできたどのミステリーとも異なるものだった。

本作の魅力は、何と言ってもその「意外性」にある。

ミステリーには様々なトリックや仕掛けがあるが、この作品で用いられている設定は、まさに「盲点」だった。

「こんな発想があったのか」という驚きと同時に、「確かにこれならすべての謎が説明できる」という納得感がある。

また、キャラクターの魅力も見逃せない。

探偵役の剣崎比留子の冷静な推理と、語り手である葉村譲の視点がバランスよく配置され、読者を物語に引き込んでいく。

二人のやり取りにはユーモアもあり、緊迫した状況の中にも読みやすさがある。

賛否が分かれる作品であることも事実だ。

この設定を「ルール違反」と感じる本格ミステリーファンもいれば、「新しいミステリーの可能性」と評価する人もいる。

しかし、いずれにしても「忘れられない読書体験」を提供してくれることは間違いない。

一気読み必至の展開、緻密な伏線回収、そして予想を裏切る真相。

ミステリー好きなら一度は読んでおきたい、現代ミステリーの金字塔である。

著者「今村昌弘」さんについて

今村昌弘さんは、1985年生まれの日本の小説家。『屍人荘の殺人』で2017年にデビューし、一躍ミステリー界の注目作家となった。

デビュー作が三冠を達成するという快挙を成し遂げた後も、精力的に執筆を続けている。『魔眼の匣の殺人』(2019年)では、葉村と剣崎のコンビが再び登場し、新たな謎に挑む姿が描かれた。シリーズ第三作『兇人邸の殺人』(2021年)も発表され、「屍人荘」シリーズは着実にファンを増やし続けている。

今村昌弘の作品の特徴は、本格ミステリーの伝統を尊重しながらも、常識を覆す大胆な発想にある。読者の予想を裏切りながらも、フェアに伏線が張られているため、驚きとともに納得感を味わえる。今後のミステリー界を牽引していく存在として、期待が高まる作家である。

『屍人荘の殺人』を読んだ最後に

『屍人荘の殺人』は、「ミステリーの新しい可能性」を示した作品である。

伝統的な本格ミステリーの枠組みを守りながらも、誰も思いつかなかった設定を投入することで、ジャンルに新風を吹き込んだ。

読後には、きっと誰かにこの驚きを共有したくなるだろう。

しかし同時に、「ネタバレは絶対にしたくない」という気持ちも芽生えるはずだ。

それほどまでに、この作品の「秘密」は守る価値がある。

もしあなたがまだこの作品を読んでいないなら、ぜひ何の情報も入れずに手に取ってほしい。

そして、あなた自身でその驚きを体験してほしい。

読み終わった後、きっとこの作品について語りたくなるはずだ。

続編の『魔眼の匣の殺人』『兇人邸の殺人』も、それぞれ独特の魅力を持つ作品となっている。

『屍人荘の殺人』で葉村と剣崎のコンビに魅了されたなら、ぜひシリーズを追いかけてみることをお勧めしたい。

ミステリーの常識を覆す衝撃の体験を、あなたもぜひ味わってみてはいかがだろうか。

屍人荘の殺人

(★4.0)