『犬がいた季節』 伊吹有喜さん著|あらすじ・レビュー

『犬がいた季節』 伊吹有喜さん著|あらすじ・レビュー

2025年3月8日

犬がいた季節

(★4.6)
(Kindle¥836 / 楽天¥880 / オーディブル聴き放題)


伊吹有喜さんの恋愛小説『犬がいた季節』の書評です。

犬と少年少女たちが紡ぐ、かけがえのない季節。心があたたかくなる、涙と希望の青春小説。

『犬がいた季節』について

『犬がいた季節』は、2020年10月に双葉社から発行された伊吹有喜さんの小説。

「2021年本屋大賞」第3位、「第34回山本周五郎賞」候補。

『犬がいた季節』登場人物

塩見優花(しおみゆうか):主人公 八高と呼ばれる三重県の進学校の美術部の前部長 パン工房の長女

早瀨光司郞(はやせこうしろう):優花の同級生で美術部員 芸大志望

コーシロー:犬 美術部の光司郞の席に迷いこんだことからコーシローと名付けられる

『犬がいた季節』あらすじ

1988年夏の終わりのある日、高校に迷い込んだ一匹の白い子犬。

「コーシロー」と名付けられ、以来、生徒とともに学校生活を送ってゆく。

初年度に卒業していった、ある優しい少女の面影をずっと胸に秘めながら…。

昭和から平成、そして令和へと続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた18歳の逡巡や決意を、瑞々しく描く青春小説の傑作。

Amazonより引用

伊吹有喜さんの『犬がいた季節』は、三重県の高校を舞台に、時代を超えてさまざまな生徒たちと一匹の犬の交流を描いた感動的な物語です。

校内に住みついた愛犬「コーシロー」は、1980年代から2000年代までの数十年間、異なる時代を生きる生徒たちの心に寄り添い、それぞれの青春の一ページを彩ります。

物語は複数の視点で語られ、時代ごとに変わる生徒たちの悩みや喜びが繊細に描かれています。

進路や恋愛、家族の問題、夢と現実の狭間で揺れ動く彼らの姿を見守るように、コーシローは静かに存在し続けます。

その姿が、読者にとっても懐かしさや温かさを感じさせるのが本作の魅力です。

『犬がいた季節』レビュー・感想

冒頭~第1話(昭和63年度 1988年) めぐる潮の音

高校3年生の優花と光司郞 犬のコーシローとの出会い

第2話(平成3年度 1991年) セナと走った日

F1レースを通じて友情を育んだ2人の男子高校生の物語

第3話(平成6年度 1994年) 明日の行方

阪神淡路大震災で被災した祖母と高3少女の物語

第4話(平成9年度 1997年) スカーレットの夏

お互いに秘密を持つ2人の高校生の男女が惹かれあう物語

第5話(平成11年度 1999年) 永遠にする方法

英語教師となった優花と男子高校生の淡い恋の物語

最終話(令和元年 2019年) 犬がいた季節

八高創立100周年記念式典で再開した優花と光司郞


「犬がいた季節」を読んでみて、時代を超えた青春群像劇でありながら、どこかノスタルジックな雰囲気が漂う作品。特に、世代ごとの違いや、それぞれの生徒たちが抱える悩みが丁寧に描かれている点が印象的でした。

高校時代という人生の節目において、友情や恋愛、進路の選択に迷いながらも成長していく登場人物たちの姿は、どの世代の読者にも共感を呼びます。

また、物語を通して描かれる「コーシロー」という犬の存在が、まるで時を超えた絆の象徴のようで、読後には温かい気持ちが広がります。

文章は優しく柔らかい語り口で進み、読みやすさと文学的な美しさを兼ね備えています。

伊吹有喜さんの作品らしい、穏やかで心に沁みる描写が随所に見られ、まるで長編の短編集を読んでいるかのような感覚になります。

著者「伊吹有喜」さんについて

『犬がいた季節』の著者、伊吹有喜(いぶきゆき)さんは三重県出身の作家です。

2008年『風待ちのひと』(改題 夏の終わりのトラヴィアータ)でポプラ社小説大賞特別賞を受賞しデビュー。

2010年に二作目『四十九日のレシピ』を刊行。同作は2011年にNHKにてドラマ化、2013年に映画化。

四日市市観光大使、おわせ観光大使(尾鷲市)

伊吹有喜さんの作品は、時代の雰囲気や流行を作品に織り込み、家族のすれ違いや友情、恋愛など、人間関係の機微を丁寧に描いていきます。

ぜひ一度、手にとって読んでみてください。

『犬がいた季節』を読んだ最後に

『犬がいた季節』を読み終えたとき、懐かしさとともに、過ぎ去った日々を振り返る気持ちが込み上げてきました。

コーシローが見守り続けた高校生活の景色は、読者それぞれの青春とも重なり、どこか胸が温かくなるのではないでしょうか。

青春時代を思い出しながら、人生の中で何が大切なのかを改めて考えさせてくれる作品です。

犬と人との関係を通して、優しさや愛情の大切さを感じさせてくれる一冊として、多くの人におすすめしたいと思います。

犬がいた季節

(★4.6)
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