『正体』 染井為人さん著|あらすじ・レビュー

『正体』 染井為人さん著|あらすじ・レビュー

正体

(★4.6)
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染井為人さんの小説『正体』の書評です。

埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した!
必死に逃亡を続ける彼の目的は?

『正体』について

『正体』は、2020年に光文社から発行された染井為人さんの長編サスペンス小説。

2022年ドラマ化。2024年には映画化された。

『正体』登場人物

鏑木慶一(かぶらぎけいいち):主人公 一家三人を殺害したとして死刑判決を受けた少年死刑囚

井尾由子(いおよしこ):息子夫婦と孫を殺されてしまう 若年性アルツハイマー

『正体』あらすじ

埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した!

東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は?

その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作!

Amazonより引用

染井為人さんの『正体』は、現代社会の闇と人間の多面性を描いた心理サスペンス。

物語は、過去に重大な罪を犯した男が、名前を変え、姿を変え、異なる人生を生きながら逃げ続ける様子を追います。

彼は社会の片隅で生きる人々と関わりながら、さまざまなアイデンティティを持つことになります。

しかし、どこまで逃げても、過去は彼を追い続け、やがて彼の「正体」が暴かれる日が訪れます。

『正体』レビュー・感想

一章 脱獄から四五五日

千葉県にある住宅型有料老人グループホーム「アオバ」ヘルパー 桜井翔司

二章 脱獄から三三日

建設会社「牛久保土木」土木作業員 遠藤雄一

三章 脱獄から一一七日

東京都世田谷区で在宅ライター 那須隆士

四章 脱獄から二八三日

長野県菅平高原にある旅館「山喜荘」住み込みバイト 袴田勲

五章 脱獄から三六五日

山形県にある「ミノリ製菓」のパン工場のパート 久間道慧

六章 脱獄から四八八日

グループホーム「アオバ」 桜井翔司


『正体』は社会派ミステリーとして、冤罪や司法制度の問題を鋭く描いた作品。

主人公・鏑木慶一は、誠実で他者を助ける善良な人物として描かれています。彼の行動や人間性が物語を通じて浮き彫りになり、読者は彼の無実を信じたくなるような感情移入を覚えます。

彼がどのように社会に溶け込み、新たな人格を作り上げるのか、そのプロセスが非常にリアルに描かれています。また、物語の構成も秀逸で、異なる人物の視点を通して徐々に彼の「正体」に迫っていく展開は、読者を引き込む力があります。

また、登場人物の一人ひとりがリアルで、どこかで実際に存在しているのではと思わせるほどの説得力があります。

特に、主人公を取り巻く人々の生き様もまた、社会の光と影を映し出しており、単なるサスペンスにとどまらない深みを与えています。

著者「染井為人」さんについて

『正体』の著者、染井為人(そめいためひと)さんは1983年生まれ、千葉県出身の小説家です。

2017年、「悪い夏」で「第37回横溝正史ミステリ大賞」優秀賞を受賞

この『正体』は、2022年にテレビドラマ化され、2024年に映画版が公開されました。

『正体』を読んだ最後に

『正体』を読み終えたとき、サスペンスとしての面白さだけでなく、人間のアイデンティティや冤罪や司法制度の問題についても深く考えさせられる一冊でした。

逃走を続ける青年の想いと複雑な人間ドラマが詰まっており、読後には余韻が残ります。

逃げ続ける人生は、本当に「自由」と言えるのか? そして、「正体」とは何を指すのか? 読み終えたあと、自分自身にも問いかけたくなる、そんな一冊でした。

サスペンス好きの方はもちろん、人間ドラマが好きな方にもぜひおすすめしたい作品です。

正体

(★4.6)
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