
アルプス席の母
(★4.6)
(Kindle¥1,683 / 楽天¥1,870 / オーディブル聴き放題)
早見和真さんの小説『アルプス席の母』の書評です。
「甲子園の歓声に包まれて――アルプス席から見つめる母の愛と青春の軌跡」
目次|Contents
『アルプス席の母』について
『アルプス席の母』は、2024年に小学館より発表された早見和真さんの小説
「2025年本屋大賞」第2位、「第15回山田風太郎賞」候補
『アルプス席の母』登場人物
秋山菜々子:シングルマザーの看護師 神奈川から息子の野球留学に伴い大阪へ移住する
秋山航太郎:菜々子の一人息子 大阪の新興校「希望学園」に進学し、甲子園を目指す
『アルプス席の母』あらすじ

かつて誰も読んだことのない著者渾身の高校野球小説が開幕する。
秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。
湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。
息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?
補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。主人公は選手から母親に変わっても、描かれるのは生きることの屈託と大いなる人生賛歌!
Amazonより引用
早見和真さんの『アルプス席の母』は、高校野球の聖地・甲子園を舞台に、母と息子の絆を描いた感動の物語です。
秋山菜々子は神奈川県で看護師として働くシングルマザー。湘南のシニアリーグでエースピッチャーとして活躍する一人息子の航太郎は、複数の強豪校からスカウトを受ける中、大阪の新興校「希望学園」に進学することを選びます。
物語は、母子が互いの人生を尊重しつつ成長する過程を軸に、高校野球の光と影を「支える側」の視点で描かれていきます。
『アルプス席の母』レビュー・感想

『アルプス席の母』は、高校野球を題材にしながらも、単なるスポーツ小説ではなく、「親子の絆」や「夢を追うことの意味」を深く問いかける作品です。
特に印象的だったのは、菜々子の視点を通して描かれる母親としての葛藤。息子の夢を全力で応援しながらも、自身の人生や経済的な不安と向き合う姿がリアルに描かれています。
早見和真さんの文章はとても読みやすく、情景描写が素晴らしいです。甲子園の熱気やアルプス席の臨場感が伝わり、まるで自分もその場にいるかのような感覚を味わえました。試合のシーンは手に汗握る展開が続き、スポーツ小説としても非常に楽しめます。
物語が進むにつれて浮かび上がるのは、「親の愛情」と「子どもの成長」。親は子どもの夢を応援したい一方で、現実的な問題にも向き合わなければなりません。本作は、そんな葛藤をリアルに描くことで、読者に深い共感を呼び起こします。
著者「早見和真」さんについて
『アルプス席の母』の著者、早見和真(はやみかずまさ)さんは、1977年神奈川県生まれの小説家です。
2008年『ひゃくはち』で小説デビュー、『月刊ヤングジャンプ』で漫画化される
2015年『イノセント・デイズ』で「第68回日本推理作家協会賞」受賞
2019年『ザ・ロイヤルファミリー』で「2019年度JRA賞馬事文化賞」「第33回山本周五郎賞」受賞
早見和真さんの作品は、リアルな人間模様とエモーショナルな余韻が魅力。シンプルながら心に響く文章で、家族や青春、スポーツを通じた成長と葛藤を描く。読後には切なさと温かさが交差する深い感動が残ります。
『アルプス席の母』を読んだ最後に
『アルプス席の母』を読み終えた後、改めて「親と子」という関係について考えさせられました。
夢を追うことの大切さと、それを支える親の想い。普段は意識しないかもしれませんが、誰しもが親の愛情のもとで育ち、今があるのだと感じさせられます。
高校野球という題材を通じて、勝負の厳しさだけでなく、そこで生まれるドラマの美しさを再認識しました。スポーツが持つ魅力や、応援する側の視点から見た試合の意味を改めて考えさせられる作品でした。
野球好きな方はもちろん、親子の物語が好きな方にもぜひ読んでほしい一冊です。読後には、きっと心が温かくなることでしょう。

アルプス席の母
(★4.6)
(Kindle¥1,683 / 楽天¥1,870 / オーディブル聴き放題)