『死んだ山田と教室』 金子玲介さん著|あらすじ・レビュー

『死んだ山田と教室』 金子玲介さん著|あらすじ・レビュー

死んだ山田と教室

(★4.1)
(Kindle¥1,980 / 楽天¥1,980 / オーディブル聴き放題)


金子玲介さんの小説『死んだ山田と教室』の書評です。

笑えるのに、どこか切ない。死と日常が隣り合う、不思議でやさしい青春ストーリー。

『死んだ山田と教室』について

『死んだ山田と教室』は、2024年に講談社より発表された金子玲介さんの小説

「第65回メフィスト賞」受賞、「本の雑誌が選ぶ2024年度上半期ベスト10」第1位、「2025年本屋大賞」ノミネート作品

『死んだ山田と教室』登場人物

山田:主人公 男子校の穂木高校2年E組の人気者 

花浦先生:2年E組の担任教諭

和久津:山田の親友 同じクラスの同級生

『死んだ山田と教室』あらすじ

二度と戻らない青春時代。
教室に響く声は生の証。

夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、2年E組の人気者だった。

二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。

〈俺、2年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。

Amazonより引用

金子玲介さんの『死んだ山田と教室』は、男子校を舞台にした青春ミステリー。

夏休みが終わる直前、2年E組の人気者・山田が飲酒運転の車に轢かれて亡くなります。勉強もできて面白く、誰にでも優しい山田の死はクラス全体に深い悲しみをもたらしました。

しかし、2学期初日の教室で起きたのは驚きの展開。

担任の提案で席替えをしようとしたその時、教室のスピーカーから山田の声が。

声だけになった山田は「俺、2年E組が大好きなんで」と語り、クラスメイトたちとの不思議な日々が始まります。

『死んだ山田と教室』レビュー・感想


『死んだ山田と教室』は、一見奇抜な設定ながらも、その背後にあるテーマや感情描写が非常に深い作品でした。

山田がスピーカーとしてクラスメイトと会話するというユニークなアイデアには笑いもあり、コミカルな場面が多い一方で、物語全体には切なさや孤独感も漂っています。

特に印象的だったのは、「山田」という存在そのものがクラスメイトたちの日常をどう変えたか。そして彼らが卒業していく中で、それぞれがどんな形で彼を記憶に留めていくかという点です。

「死者との関係性」をここまでリアルかつ温かみに溢れる形で描いた物語には、多くの人が共感できるでしょう。

青春小説としてだけでなく、人間関係や時間の流れについて深く考えさせられる作品でした。笑いあり涙ありの展開を楽しみながらも、「忘却」や「孤独」といった普遍的なテーマが胸に迫ります。

著者「金子玲介」さんについて

『死んだ山田と教室』の著者、金子玲介(かねこれいすけ)さんは、1993年神奈川県生まれの小説家です。

2023年『死んだ山田と教室』で「第65回メフィスト賞」を受賞してデビュー
同書は「本の雑誌が選ぶ2024年度上半期ベスト10」第1位、「2025年本屋大賞」ノミネート

金子玲介さんは、青春の輝きと切なさを独特のリズムで描き、リアルで軽妙な会話を中心に笑いと深い余韻を織り交ぜた文体が特徴的です。登場人物たちの生々しい感情や空間の空気感を鮮やかに表現します。

『死んだ山田と教室』を読んだ最後に

『死んだ山田と教室』を読み終えた後、「タイトルそのものが物語全体を象徴していた」と気づきました。

生きている人々と亡くなった人々との間には確実な隔たりがあります。それでもなお、その隔たりを越えて繋がろうとする姿勢や思い出す行為そのものが、人間らしさなのだと思わせてくれる一冊でした。

ぜひ、多くの方にこの作品を手に取っていただきたいと思います!

死んだ山田と教室

(★4.1)
(Kindle¥1,980 / 楽天¥1,980 / オーディブル聴き放題)