
カフネ
(★4.5)
(Kindle¥1,870 / 楽天¥1,870 / オーディブル聴き放題)
阿部暁子さんの小説『カフネ』の書評です。
「ポルトガル語の「カフネ」が教えてくれる、言葉にしなくても伝わるやさしさ。」
目次|Contents
『カフネ』について
『カフネ』は、2024年に講談社より発表された阿部暁子さんの小説
「第8回未来屋小説大賞」、「2025年本屋大賞」受賞
『カフネ』登場人物
野宮薫子:主人公 春彦の姉で41歳、法務局勤務
小野寺せつな:春彦の元恋人 カフネで働く卓越した料理人
野宮春彦:薫子の弟 せつなの元恋人 29歳の誕生日に亡くなる
『カフネ』あらすじ

一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。
弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。
弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。
食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
Amazonより引用
阿部暁子さんの小説『カフネ』は、喪失、癒し、人との繋がり、そして人生の困難を乗り越える上での食事とケア(世話)の深い役割を中心に描いた物語。
2025年本屋大賞受賞作であり、未来屋小説大賞や「あの本、読みました?大賞」にも選ばれるなど、批評家からも高い評価を得ています。
物語は、愛する人を失った二人の女性が、ユニークな家事代行サービスを通じて出会い、互いの人生に関わっていく様を描く。
悲しみや孤独を抱えながらも、食卓を囲み、他者の生活に触れることで、登場人物たちは少しずつ再生への道を歩み始める 。
『カフネ』レビュー・感想

阿部暁子さんの作品には、いつも言葉にできない感情の揺らぎが繊細に描かれていますが、『カフネ』はその中でも特に“静かな強さ”を感じました。
派手な展開はないのに、ページをめくる手が止まらなくなるのは、登場人物たちの心の声がまっすぐに響いてくるからだと思います。
印象的だったのは、登場人物同士が「わかりあおう」とする姿勢。
決して完璧ではない、でも不器用にでも前に進もうとする姿が、読む側にも勇気を与えてくれます。
「愛すること」「受け入れること」の意味を、やさしく問いかけてくるような作品でした。
著者「阿部暁子」さんについて
『カフネ』の著者、阿部暁子(あべあきこ)さんは、1985年岩手県生まれの小説家です。
2008年『いつまでも』(『屋上ボーイズ』に改題)で「第17回ロマン大賞」を受賞しデビュー
2025年『カフネ』で「2025年本屋大賞」受賞
阿部暁子さんの作品は、繊細で透明感のある文体が特徴。日常のなかにある感情の揺らぎや、言葉にしきれない想いを丁寧にすくい上げ、静かに読者の心に染み入ります。
登場人物の内面や関係性の機微を大切に描く作風で、読後にはやさしい余韻とあたたかさが残る作品が多いです。穏やかな文章の中に、鋭い感受性と深い人間理解が感じられます。
『カフネ』を読んだ最後に
『カフネ』は、誰かの存在を大切に思うこと、言葉にしなくても伝わる気持ちがあること。そんなささやかな愛情に、あらためて気づかせてくれる物語です。
忙しない毎日に、ふと立ち止まりたくなったとき。
自分の心と静かに向き合いたいときに、そっと寄り添ってくれる一冊だと思います。

カフネ
(★4.5)
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