
優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ
(★4.4)
(オーディブル聴き放題 / Kindle¥715 / 楽天¥748)
知念実希人さんの小説『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』の書評です。
犬の姿をした死神がホスピスで紡ぐ、心温まる物語。
知念実希人著「優しい死神の飼い方」は、死を前にした人々の願いに寄り添う死神を通し、「生きること」や「繋がり」を問いかけます。
涙の後に温かい感動が広がる物語の魅力に迫ります。
目次|Contents
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』について
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』は、2013年11月に光文社から発行された知念実希人さんの小説。
累計55万部突破の『死神シリーズ』第1巻。
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』登場人物
レオ:主人公 ゴールデンレトリバーに姿を変えられ、地上に派遣された死神
朝比奈菜穂(あさひな なほ):ホスピス「丘の上病院」の看護師 レオを保護する
南竜夫(みなみ たつお): 元警察官
孫潔(そん じえ): 元宝石商
内海直樹(うつみ なおき): 若くして末期がんを患う画家
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』あらすじ

犬の姿を借り、地上のホスピスに左遷……もとい派遣された死神のレオ。
戦時中の悲恋。
洋館で起きた殺人事件。
色彩を失った画家。死に直面する人間を未練から救うため、患者たちの過去の謎を解き明かしていくレオ。
しかし、彼の行動は、現在のホスピスに思わぬ危機を引き起こしていた――。天然キャラの死神の奮闘と人間との交流に、心温まるハートフルミステリー。
Amazonより引用
「死神」シリーズの第1巻『優しい死神の飼い方』は、「犬の姿をした死神」という、なんとも風変わりな主人公が登場する物語。
彼は、とあるホスピスに派遣され、そこで出会う人々の未練を解消し、安らかな旅立ちを手助けするという使命を負っている。
しかし、死神でありながらも情に厚く、時にはユーモラスな一面も見せる彼の姿は、私たちが抱く「死神」のイメージを覆します。
物語は、彼がホスピスで出会う様々な患者さんたちとのエピソードを中心に展開していきます。
それぞれの患者さんが抱える後悔や願い、そして残された時間の中で見つけ出す希望や愛情が、温かくも切ない筆致で描かれています。
死を目前にした人々の人間ドラマを通して、「生きること」そして「死ぬこと」の意味を問いかける、感動的な物語です。
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』レビュー・感想

第1章 死神、初仕事にとりかかる
-元警察官の戦時中のある出来事への未練
第2章 死神、殺人事件を解明する
-元宝石商の過去の過ちに対する未練
第3章 死神、芸術を語る
-色彩を失った画家の未練
第4章 死神、愛を語る
-「丘の上病院」の看護師、朝比奈菜穂の未練
第5章 死神、街におりる
第6章 死神、絶体絶命
第7章 死神のメリークリスマス
-レオと患者たちの絶体絶命のピンチを描く
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』を読んでみて、まず、この作品の最大の魅力は、なんといっても主人公である「死神」のキャラクター設定でしょう。
犬の姿をしているという可愛らしさとは裏腹に、時には冷静沈着に、時には人間以上に人間らしい感情を露わにする彼の姿に、いつの間にか引き込まれてしまいます。
彼が患者さんたちと心を通わせ、それぞれの「最後の願い」を叶えようと奔走する姿は、読んでいて胸が熱くなりました。
ホスピスという舞台設定も秀逸です。
死を意識せざるを得ない場所でありながら、そこには絶望だけでなく、残された時間を大切に生きようとする人々の温かい交流や、ささやかな日常の喜びが描かれています。
重いテーマを扱いながらも、全体的に優しい雰囲気に包まれているのは、知念実希人さんの筆致のなせる技だと感じました。
各エピソードで語られる患者さんたちの人生は、どれも個性的で、深く考えさせられるものばかりです。
彼らが抱える後悔や未練、そして最後にたどり着く思いは、私たち自身の生き方や大切な人との関わり方を見つめ直すきっかけを与えてくれます。
涙なしには読めない場面も多くありましたが、読後は不思議と心が温かくなるような、そんな作品でした。
特に印象的だったのは、死神が人間の感情を理解しようと努める中で、彼自身も変化していく様子です。
最初は淡々と任務をこなそうとしていた彼が、人間との触れ合いを通して葛藤し、成長していく姿は、物語に深みを与えています。
著者「知念実希人」さんについて
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』の著者、知念実希人は1978年10月12日に沖縄県南城市で生まれた日本の小説家兼医師です。
医療ミステリーの旗手として、医師の経験を活かした作品を多く執筆しています。
2011年に『レゾン・デートル』でばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、2012年に『誰がための刃 レゾンデートル』で作家デビューしました。
代表作には今回紹介した「天久鷹央の推理カルテ」シリーズなどがあり、『仮面病棟』『祈りのカルテ』『硝子の塔の殺人』などのヒット作を執筆しています。
また2018年から2020年にかけて、3年連続で本屋大賞にノミネートされました。
知念実希人さんの作品は、医療知識を活かしたリアルな描写と、人間味のあるドラマ性が特徴で、多くの読者から支持を得ています。
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』を読んだ最後に
『優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ』は、「死」という誰にとっても避けられないテーマを扱いながらも、決して暗い気持ちになることなく、むしろ生きることの素晴らしさや、人との繋がりの大切さを教えてくれる作品です。
読み終えた後には、自分自身の人生や、周りの大切な人たちのことを改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか。
普段、あまり意識することのない「死」について、そして「どう生きるか」ということについて、優しい気持ちで向き合えるようになるはずです。
心が疲れているときや、大切な人との関係に悩んでいるときに読むと、きっと温かい涙とともに、明日への活力が湧いてくるはずです。
ファンタジーでありながらも、私たちの日常に寄り添ってくれるような、そんな優しい物語でした。ぜひ、多くの方に手に取っていただきたい一冊です。

優しい死神の飼い方 「死神」シリーズ
(★4.4)
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