『神様のカルテ2』 夏川草介さん著|あらすじ・レビュー

『神様のカルテ2』 夏川草介さん著|あらすじ・レビュー

2025年5月10日

神様のカルテ2

(★4.5)
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夏川草介さんの小説『神様のカルテ2』の書評です。

24時間365日、そこには命がある。夏川草介が紡ぐ、心揺さぶる医療ドラマ第2弾。医師たちの葛藤、夫婦の絆、そして受け継がれる想いが胸を打つ。

『神様のカルテ2』について

『神様のカルテ2』は、2010年に小学館より発表された夏川草介さんの小説。

シリーズ275万部のベストセラー「神様のカルテ」シリーズの第2作。

『神様のカルテ2』登場人物

栗原一止(いちと):主人公 信州松本にある本庄病院に勤務する29歳の内科医

栗原榛名(はるな):一止の妻 山岳写真家

砂山 次郎:一止の親友 同僚の外科医

進藤 辰也:一止の大学時代の同級生 本庄病院に赴任してくる

外村 勝子:救急部看護師長 30代で独身

東西 直美:病棟主任看護師

水無 陽子:本庄病院の新人看護師

大狸先生(おおだぬき):本庄病院の内科部長

古狐先生(こぎつね):本庄病院の内科副部長 本名は内藤鴨一

『神様のカルテ2』あらすじ

医師の話ではない。人間の話をしているのだ。

栗原一止は夏目漱石を敬愛し、信州の「24時間、365日対応」の本庄病院で働く内科医である。

写真家である妻・ハルの献身的な支えもあり、多忙な日々を乗り切っている一止に、母校の医局からの誘いがかかる。

今の病院で一人でも多くの患者と向き合うか、母校の大学病院で最先端の医療を学ぶか。一止が選択したのは、本庄病院での続投だった(『神様のカルテ』)。

新年度、内科病棟に一止の旧友・進藤辰也が東京の病院から新任の医師としてやってくる。
かつて進藤は“医学部の良心”と呼ばれていた。
しかし、彼の医師としての行動は周囲を困惑させるものだった。

そして、さらに大きな試練が一止たちを待ち受けていた――。

Amazonより引用

舞台は信州松本の地方病院。

夏目漱石を敬愛し、古風な言葉遣いをする若き内科医、栗原一止(くりはら いちと)が働くのは、「24時間365日対応」を掲げる本庄病院。

前作で、地域医療に邁進する決意を新たにした一止は、愛する妻・ハルや信頼する同僚たちに囲まれ、相変わらず多忙な日々を送っていました。

そんな一止のもとに、大学時代の同窓であり、かつて「良心」とまで言われた優秀な医師、進藤辰也が赴任してきます。

しかし、再会した辰也はどこか以前とは変わってしまった様子。彼の抱える事情とは一体何なのでしょうか。

一方、一止の恩師である古狐先生にも病魔の影が忍び寄ります。

そして、写真家である妻ハルとの間にも、ささやかながらも大切な変化が訪れようとしていました。

医師としての使命、友情、師弟愛、そして夫婦の絆。

新たな局面を迎える本庄病院で、一止はまたしても様々な「命」の現場に立ち会い、厳しい現実と温かな奇跡に触れながら、医師として、そして夫として成長していきます。

『神様のカルテ2』レビュー・感想


『神様のカルテ2』を読んで、まず感じたのは前作にも増して深まる「人間ドラマ」の濃さです。

一止先生の周りの人々、特に今作で重要な役割を担う進藤辰也医師の存在が、物語に新たな奥行きを与えています。

かつての「良心」が抱える葛藤や苦悩は、読んでいて胸が締め付けられるようでした。

彼の変化を通して、医療の理想と現実、そして医師もまた一人の人間であるという当たり前の事実を改めて突きつけられます。

もちろん、一止先生自身の成長も見逃せません。

恩師である古狐先生の病を通して、医師としての無力感や、それでも諦めない強い意志が描かれ、前作以上に彼の人間的な魅力が増しているように感じました。

また、妻ハルさんとの日常や、彼女との間に芽生える新しい命の気配は、過酷な医療現場の物語の中に温かな光を投げかけてくれます。

この夫婦の絆の深さには、読むたびに心が洗われるようです。

前作で心を掴まれたユーモラスな会話や、信州の美しい自然描写は今作でも健在で、時にクスッと笑わせてくれたり、時に切ない気持ちに寄り添ってくれたりします。

医療という重いテーマを扱いながらも、読後感が温かいのは、やはり登場人物たちの優しさや、夏川先生の筆致の温かさなのだと思います。

著者「夏川草介」さんについて

『神様のカルテ2』の著者、夏川草介(なつかわそうすけ)さんは、1978年大阪府生まれの小説家です。

信州大学医学部卒業後、⻑野県にて地域医療に従事
2009年『神様のカルテ』で「第10回小学館文庫小説賞」を受賞しデビュー
同書は2010年「本屋大賞」第2位となり、映画化される

他の著書に、世界数10カ国で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の最前線に立つ現役医師である著者が自らの経験をもとに綴り大きな話題となったドキュメント小説『臨床の砦』など

『神様のカルテ2』を読んだ最後に

『神様のカルテ2』を読み終えた後、前作のファンはもちろんのこと、より深く登場人物たちの心の機微に触れたいと願う読者にとって、期待を裏切らない素晴らしい続編でした。

医師としての葛藤、友情の複雑さ、そして家族愛の尊さが、より一層丁寧に描かれています。

この作品を読むと、普段当たり前のように受けている医療の裏側には、数えきれないほどの苦悩や努力、そして温かい想いがあるのだと改めて感じさせられます。

そして、どんなに困難な状況でも、人と人との繋がりの中に希望の光を見出そうとする登場人物たちの姿に、勇気をもらえます。

前作を読まれた方はもちろん、まだ『神様のカルテ』シリーズに触れたことのない方にも、ぜひ手に取っていただきたい作品です。

読み終えた後、きっとあなたの心にも温かい灯がともることでしょう。そして、大切な誰かのことを想わずにはいられなくなるはずです。

神様のカルテ2

(★4.5)
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