『神様のカルテ3』 夏川草介さん著|あらすじ・レビュー

『神様のカルテ3』 夏川草介さん著|あらすじ・レビュー

神様のカルテ3

(★4.6)
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夏川草介さんの小説『神様のカルテ3』の書評です。

信州の風、命の鼓動、そして医師の誓い。夏川草介が描く、温かくも切ない地域医療の現実と希望の物語、第3弾。あなたの心に、再び深い感動を。

『神様のカルテ3』について

『神様のカルテ3』は、2012年に小学館より発表された夏川草介さんの小説。

シリーズ275万部のベストセラー「神様のカルテ」シリーズの第3作。

『神様のカルテ3』登場人物

栗原一止(いちと):主人公 信州松本にある本庄病院に勤務する30歳の内科医

栗原榛名(はるな):一止の妻 山岳写真家

砂山 次郎:一止の親友 同僚の外科医

進藤 辰也:一止の大学時代の同級生 『神様のカルテ2』で本庄病院に赴任してくる

小幡先生:『神様のカルテ3』から登場 12年目の内科医 

外村 勝子:救急部看護師長 30代で独身

東西 直美:病棟主任看護師

水無 陽子:本庄病院の新人看護師

大狸先生(おおだぬき):本庄病院の内科部長 本名は板垣源蔵

古狐先生(こぎつね):本庄病院の内科副部長 本名は内藤鴨一

『神様のカルテ3』あらすじ

シリーズ275万部のベストセラー!

栗原一止は、信州にある「24時間365日対応」の本庄病院で働く内科医である。

医師不足による激務で忙殺される日々は、妻・ハルの支えなくしては成り立たない。

昨年度末、信濃大学医局からの誘いを断り、本庄病院残留を決めた一止だったが、初夏には恩師である古狐先生をガンで失ってしまう。

夏、新しい内科医として本庄病院にやってきた小幡先生は、内科部長である板垣(大狸)先生の元教え子であり、経験も腕も確かで研究熱心。一止も学ぶべき点の多い医師だ。

しかし彼女は治ろうとする意思を持たない患者については、急患であっても受診しないのだった。

抗議する一止に、小幡先生は「あの板垣先生が一目置いているっていうから、どんな人かって楽しみにしてたけど、ちょっとフットワークが軽くて、ちょっと内視鏡がうまいだけの、どこにでもいる偽善者タイプの医者じゃない」と言い放つ。

彼女の医師としての覚悟を知った一止は、自分の医師としての姿に疑問を持ち始める。

そして、より良い医者となるために、新たな決意をするのだった。

Amazonより引用

信州・松本の「24時間365日対応」の本庄病院で働く内科医・栗原一止は、30歳を迎え、激務に追われる日々を送っています。

前作で古狐先生を失い、消化器内科の空気も変わりつつあるなか、新たに札幌からベテラン医師・小幡奈美先生が赴任してきます。

小幡先生は臨床と研究を両立させる実力派でありながら、患者や同僚に対しても妥協しない厳しさを持ち合わせていました。

ある患者の診療方針を巡り、小幡先生の「医者は無知であることがすなわち悪」という信念や、患者を選別するような姿勢に一止は大きな疑問と葛藤を抱きます。

忙しさに流されがちな日常の中で、自分は何を目指し、どんな医師でありたいのか――一止は悩み、仲間や家族と向き合いながら、自らの進むべき道を模索していきます。

やがて同期の砂山の転勤や、仲間との別れ、そして患者や家族とのささやかな交流を通して、一止は大きな決断を下すことに。

『神様のカルテ3』レビュー・感想


『神様のカルテ3』を読んで、シリーズ第3作にして第1部完結編とされるだけあり、主人公・一止の成長と転機が強く描かれています。

これまでの作品が「地域医療の現実」や「医師と家族の問題」を主題としていたのに対し、本作では「医師自身の在り方」や「プロフェッショナリズム」により深く踏み込んでいるのが印象的でした。

小幡先生という新たな強烈な個性が加わることで、一止の迷いや弱さが浮き彫りになり、読者もまた「自分はどう生きるべきか」と問いかけられる感覚になります。

小幡先生の「医者は無知であることが悪」という厳しい信念や、患者を選ぶような姿勢は、現実の医療現場でも議論の的となるテーマであり、物語にリアリティと緊張感を与えています。

一方で、シリーズの魅力である温かな人間関係や、信州の自然・祭りの描写、そして一止の妻・榛名の存在感も健在です。

忙しさの中でもささやかな幸せや、仲間との語らいに心が和み、時に涙を誘われる場面も多くありました。

軽妙な会話やユーモアも随所に散りばめられており、重いテーマを扱いながらも読みやすさを失わないのは、夏川草介さんならではの筆致だと感じました。

著者「夏川草介」さんについて

『神様のカルテ3』の著者、夏川草介(なつかわそうすけ)さんは、1978年大阪府生まれの小説家です。

信州大学医学部卒業後、⻑野県にて地域医療に従事
2009年『神様のカルテ』で「第10回小学館文庫小説賞」を受賞しデビュー
同書は2010年「本屋大賞」第2位となり、映画化される

他の著書に、世界数10カ国で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の最前線に立つ現役医師である著者が自らの経験をもとに綴り大きな話題となったドキュメント小説『臨床の砦』など

『神様のカルテ3』を読んだ最後に

『神様のカルテ3』を読み終えた後、一止の「迷い」や「決断」に自分自身も寄り添いながらページをめくっていたことに気づきます。

医療小説でありながら、人生の選択や人との向き合い方、そして「正解のない問い」にどう向き合うかを静かに、しかし力強く問いかけてくる一冊でした。

シリーズの中でも特に心に残る作品であり、医療現場の厳しさや温かさ、そして人が人を支えることの尊さを改めて感じさせてくれます。

一止や榛名、仲間たちの物語は、これからも多くの読者の背中をそっと押してくれることでしょう。

神様のカルテ3

(★4.6)
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