
猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ
(★4.5)
(オーディブル聴き放題 / Kindle¥733 / 楽天¥814)
知念実希人さんの医療ミステリー長編小説『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』の書評です。
「容疑者は、天久鷹央!?」
連鎖する事件、疑惑の目を向けられる主人公――果たして真犯人は誰か?
読者を最後まで翻弄する、極上の医療ミステリー長編。
目次|Contents
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』について
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』は、2024年 実業之日本社文庫から発行された知念実希人さんの医療ミステリー長編小説シリーズ。
短編集の「推理カルテ」、長編の「事件カルテ」累計350万部突破の『天久鷹央(あめく たかお)』シリーズ。テレビアニメやテレビドラマ化もしています。
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』登場人物
天久鷹央(あめく たかお):主人公 天医会総合病院 副院長 兼 統括診断部部長 小柄で童顔のため、高校生に間違えられることも
小鳥遊優(たかなし ゆう):鷹央の部下 鷹央に小鳥というあだ名をつけられる
鴻ノ池舞(こうのいけ まい):研修医 鷹央に憧れている
成瀬 隆哉:田無署の刑事
九頭龍零心朗:帝都大学客員教授 九頭龍ラボ会長
九頭龍(佐々木)燐火:零心朗の後妻 鷹央の旧友
九頭龍イツキ:零心朗の長男 循環器内科医
九頭龍フタバ:零心朗の長女 植物学者
九頭龍サンジ:零心朗の次男 九頭龍ラボ技術開発部部長
長谷川:九頭龍邸 執事
辻堂:九頭龍邸 メイド
乗川:顧問弁護士
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』あらすじ

容疑者は、 天久鷹央!?
天才医師、絶体絶命の窮地。長野県の山奥に聳え立つ洋館、 九頭龍邸に招かれた天久鷹央。
そこで彼女を待っていたのは、計算機工学の天才、九頭龍零心朗からの「最後の依頼」だった。
だが、捜査を開始し間もなく、とある 「殺人」が起き、事態は混迷を極めていく。
浮かび上がる容疑者たちと、連鎖する事件。
そして最後に嫌疑がかかったのは、まさかの…?
現役医師が描く本格医療ミステリー、書き下ろし長編!
Amazonより引用
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』は、天才女医・天久鷹央が、難解な医療ミステリーに挑む「天久鷹央の事件カルテ」シリーズの第10弾。
長野県の山奥にそびえ立つ洋館・九頭龍邸に招かれた天才医師・天久鷹央と統括診断部の仲間たち。
彼女たちを待っていたのは、計算機工学の天才・九頭龍零心朗からの「最後の依頼」でした。
零心朗は事故で重篤な状態にあり、彼を殺そうとした犯人を突き止めてほしいというのが依頼の内容。
だが捜査が始まって間もなく、屋敷内で殺人事件が発生。
連鎖する事件、浮かび上がる容疑者たち、そしてついには鷹央自身が最大の容疑者に――。
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』レビュー・感想

『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』は、「天久鷹央シリーズ」らしい、医学的知識を駆使したトリックと、王道のクローズドサークル型ミステリーが融合した一冊です。
山荘を舞台にした密室劇、遺産相続をめぐる複雑な人間関係、そして「容疑者は天久鷹央」という衝撃の展開。
シリーズの中でも特にミステリー色が強く、読者を一気に引き込むストーリーテリングの巧みさが際立っています。
トリックは「量が違えば薬は毒になる」という医学的なテーマを軸に、素人でも理解しやすいよう丁寧に描かれているのが印象的。
登場人物の個性も際立ち、特に鷹央と小鳥遊、鴻ノ池の信頼関係や掛け合いが物語に温かさを添えています。
また、鷹央の過去や、元恋人・燐火との因縁も絡み、シリーズファンにはたまらない展開。
「全ての不可能を除外して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」という鷹央の信念が、今回ほど強く響く作品はないかもしれません。
天才同士の対決、医学と論理のせめぎ合い、そして人間関係の機微
――どれも知念実希人さんらしい巧妙な構成で、シリーズの新たな魅力を感じました。
著者「知念実希人」さんについて
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』の著者、知念実希人は1978年10月12日に沖縄県南城市で生まれた日本の小説家兼医師です。
医療ミステリーの旗手として、医師の経験を活かした作品を多く執筆しています。
2011年に『レゾン・デートル』でばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、2012年に『誰がための刃 レゾンデートル』で作家デビューしました。
代表作には今回紹介した「天久鷹央の事件カルテ」シリーズなどがあり、『仮面病棟』『祈りのカルテ』『硝子の塔の殺人』などのヒット作を執筆しています。
また2018年から2020年にかけて、3年連続で本屋大賞にノミネートされました。
知念実希人さんの作品は、医療知識を活かしたリアルな描写と、人間味のあるドラマ性が特徴で、多くの読者から支持を得ています。
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』を読んだ最後に
『猛毒のプリズン』を読み終えて感じたのは、「自分の居場所」とは何か、という問いかけです。
鷹央が最後に見出したのは、特別な才能や環境ではなく、仲間たちとの信頼と絆。
どんなに天才であっても、人は一人では生きられない――そんなメッセージが心に残ります。
また、シリーズ10周年の節目にふさわしい、集大成的な一作でもありました。
医療ミステリーとしての面白さはもちろん、キャラクターたちの成長や関係性の深化も見どころ。
「猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ」は、シリーズファンはもちろん、初めて手に取る方にもおすすめできる、知念実希人さん渾身の医療ミステリーでした。

猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ
(★4.5)
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