『方舟』 夕木春央さん著|あらすじ・レビュー

『方舟』 夕木春央さん著|あらすじ・レビュー

方舟

(★4.6)
(Kindle¥913 / 楽天¥913 / オーディブル聴き放題)


夕木春央さんの推理小説『方舟』の書評です。

地下建築に閉じ込められた大学時代の仲間たち。脱出するためには誰か一人を犠牲にする必要がある。本格推理ミステリー。

『方舟』について

『方舟』は、2022年に講談社から発行された夕木春央さんの推理小説。

「週刊文春ミステリーベスト10」&「MRC大賞2022」堂々ダブル受賞!

『方舟』登場人物

越野柊一:主人公 大学時代の仲間たちと共に山奥の地下建築物を訪れる

篠田翔太郎:柊一のいとこ 探偵役を務める謎めいた人物

麻衣:柊一に結婚相手である隆平について相談を持ちかける

『方舟』あらすじ

9人のうち、死んでもいいのは、

ーー死ぬべきなのは誰か? 大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。

翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー

犯人以外の全員が、そう思った。

タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。

Amazonより引用

夕木春央さんの『方舟』は、極限状態に追い込まれた人々の心理と、それに伴う推理が絡み合うサスペンスミステリー。

物語は、大学のゼミ仲間たちが山中の地下建築で、土砂崩れによって閉じ込められるところから始まります。

外部との連絡が絶たれ、食料や水も限られた環境の中、彼らは生き延びるための選択を迫られます。

しかし、そこで起きたのは「密室殺人」。疑心暗鬼に陥る中、仲間の一人が探偵役となり、事件の真相を解き明かそうとします。

果たして、密室で起きた殺人の犯人は誰なのか? 極限状況の中で、人々はどんな決断を下すのか? 背筋の凍るような心理戦が展開されていきます。

『方舟』レビュー・感想

1 方舟

2 天災と殺人

3 切られた首

4 ナイフと爪切り

5 選別

エピローグ


『方舟』は、「クローズド・サークル」もののミステリーとして非常に完成度が高く、息をのむ展開が続きます。特に、登場人物たちの心理描写が秀逸で、状況が悪化するにつれて人間の本性が浮き彫りになっていく様子がリアルに描かれています。

物語は序盤からテンポよく進み、読者を引き込む力が強いです。閉ざされた空間で起こる殺人事件という王道のミステリーながら、予測不能な展開が続き、飽きることがありません。真相にたどり着くまでの過程が巧妙で、読者も登場人物とともに推理を楽しむことができます。

また、本作の魅力のひとつは、「倫理観」を問う部分にもあります。命の危機に瀕したとき、人はどのような選択をするのか。その決断は正しかったのか。単なる推理小説ではなく、人間の本質に迫るテーマが込められている点が印象的でした。

著者「夕木春央」さんについて

『方舟』の著者、夕木春央(ゆうきはるお)さんは1993年生まれの推理作家です。

2019年「絞首商会の後継人」で第60回メフィスト賞を受賞。同年、改題した『絞首商會』でデビュー

2022年、この『方舟』で「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門1位、「MRC大賞2022」1位など、多くのランキングで高評価を獲得しました。

『方舟』を読んだ最後に

『方舟』を読み終えたとき、ただのミステリーにとどまらず、極限状況での人間心理や選択について深く考えさせられる作品でした。

最後まで一気に読ませる力があり、結末にたどり着いたときには、驚きとともに余韻が残ります。

ミステリー好きの方はもちろん、「極限状態での人間ドラマ」に興味がある方にもおすすめの一冊です。

読み終えた後、あなたは登場人物たちの選択をどう感じるでしょうか?

方舟

(★4.6)
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