今村昌弘さん著『魔眼の匣の殺人』|あらすじ・レビュー

今村昌弘さん著『魔眼の匣の殺人』|あらすじ・レビュー

魔眼の匣の殺人

(★4.3)


『魔眼の匣の殺人』は、『屍人荘の殺人』シリーズの第2作として2019年2月に刊行された今村昌弘氏の本格ミステリー小説です。

本作は「2020本格ミステリ・ベスト10」第2位、「週刊文春ミステリーベスト10」第3位、「このミステリーがすごい!2020年度版」第3位、「ミステリが読みたい!」第3位を獲得し、前作に続き高い評価を得た作品です。

「あと二日で、四人死ぬ」という不吉な予言から始まる本作は、オカルト要素と本格ミステリーが融合した、読者を最後まで驚かせる傑作となっています。

『魔眼の匣の殺人』について

『魔眼の匣の殺人』は、デビュー作『屍人荘の殺人』が各種ミステリランキングで第1位を獲得し、第18回本格ミステリ大賞を受賞した今村昌弘さんによる待望の第2作です。

本作の最大の特徴は、「死の予言」というオカルト要素を本格ミステリーに組み込んだ点にあります。

超常現象という非合理的な要素を扱いながらも、論理的で緻密な推理を展開することで、読者に新しいミステリー体験を提供しています。

前作『屍人荘の殺人』で衝撃的なデビューを飾った著者ですが、第2作となる本作でもその期待を裏切ることなく、むしろさらに練り上げられたトリックと予想外の展開で読者を魅了します。

ミステリーファンからの評価も高く、主要なミステリランキングで軒並みベスト3入りを果たした実力作です。

『魔眼の匣の殺人』登場人物

葉村譲:主人公 神紅大学ミステリ愛好会 会長

剣崎比留子:事件を「引き寄せる体質」を持つ女子大生

天禰サキミ:予言者の老女

『魔眼の匣の殺人』あらすじ

あと二日で、四人死ぬ――
閉ざされた“匣”の中で告げられた死の予言は成就するのか。

ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ待望の第二弾!

その日、“魔眼の匣”を九人が訪れた。

人里離れた施設の孤独な主は予言者と恐れられる老女だ。

彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。

外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。

さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。

ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。

Amazonより引用

物語は、ある不吉な予言から始まります。

「あと二日で、四人死ぬ」――この謎めいた言葉が現実のものとなるのか。

葉村譲と剣崎比留子は、とある場所で起こる連続殺人事件に遭遇します。

限られた空間の中で、予言通りに次々と起こる死。

密室状況下で繰り広げられる恐怖と混乱の中、二人は事件の真相に迫っていきます。

しかし、この事件には予言以上の謎が隠されていました。

一体誰が何のために、このような残虐な犯行に及んだのか。

そして、予言とは一体何だったのか。

読者は葉村と剣崎と共に、点と点が線で結ばれていく瞬間の快感を味わうことになります。

すべての謎が明らかになる終盤の展開は、まさに圧巻です。

『魔眼の匣の殺人』レビュー・感想


本作の最大の魅力は、オカルト要素と本格ミステリーの見事な融合にあります。

「予言」という超常現象を扱いながらも、その背後には論理的な説明が用意されており、読後の納得感が非常に高い作品となっています。

トリックの巧妙さはもちろんのこと、物語の構成力の高さにも注目です。

読者を飽きさせない展開、適切なタイミングで明かされる情報、そして最後に待ち受ける衝撃の真相――すべてが計算し尽くされています。

また、前作からの成長も感じられる作品です。

キャラクターの掘り下げがより深くなり、謎解きの論理性もさらに磨かれています。

前作を読んだ方はもちろん、本作から読み始めても十分に楽しめる構成になっています。

ミステリー初心者の方でも読みやすく、それでいてミステリーマニアをも唸らせる完成度。

エンターテインメント性と本格性を両立させた、現代日本ミステリーの傑作と言えるでしょう。

著者「今村昌弘」さんについて

今村昌弘さんは、1985年生まれの日本の小説家。『屍人荘の殺人』で2017年にデビューし、一躍ミステリー界の注目作家となった。

デビュー作が三冠を達成するという快挙を成し遂げた後も、精力的に執筆を続けている。『魔眼の匣の殺人』(2019年)では、葉村と剣崎のコンビが再び登場し、新たな謎に挑む姿が描かれた。シリーズ第三作『兇人邸の殺人』(2021年)も発表され、「屍人荘」シリーズは着実にファンを増やし続けている。

今村昌弘の作品の特徴は、本格ミステリーの伝統を尊重しながらも、常識を覆す大胆な発想にある。読者の予想を裏切りながらも、フェアに伏線が張られているため、驚きとともに納得感を味わえる。今後のミステリー界を牽引していく存在として、期待が高まる作家である。

『魔眼の匣の殺人』を読んだ最後に

『魔眼の匣の殺人』は、ミステリー小説の新しい可能性を示してくれた作品です。

オカルトと本格推理という一見相反する要素を見事に融合させ、読者に驚きと満足感を与えてくれます。

本作を読み終えた後、あなたはきっと前作『屍人荘の殺人』や続編『兇人邸の殺人』も手に取りたくなるでしょう。

剣崎比留子シリーズは、どの作品も独立して楽しめますが、シリーズを通して読むことでキャラクターへの愛着も深まります。

予想を裏切る展開、論理的な謎解き、そして読後の爽快感。

これらすべてを兼ね備えた本作は、ミステリーファンはもちろん、普段あまりミステリーを読まない方にもぜひおすすめしたい一冊です。

「あと二日で、四人死ぬ」――この予言の真相を、あなた自身の目で確かめてみてください。

魔眼の匣の殺人

(★4.3)