
流浪の月
(★4.4)
(オーディブル聴き放題 / Kindle¥720 / 楽天¥814)
凪良ゆうさんの小説『流浪の月』の書評です。
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。
実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
『流浪の月』について
『流浪の月』は、2019年に創元文芸文庫から発行された凪良ゆうさんの小説。
「2020年本屋大賞」受賞。2022年映画化され公開された。
『流浪の月』登場人物
家内 更紗(かない さらさ):9歳の少女
佐伯 文(さえき ふみ):19歳の大学生
『流浪の月』あらすじ

2020年本屋大賞受賞作。
愛ではない。
けれどそばにいたい。
新しい人間関係への旅立ちを描いた、
息をのむ傑作小説。最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。
だから15年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。
新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
Amazonより引用
凪良ゆうさんの『流浪の月』は、雨の夕方の公園で、びしょ濡れになっていた少女(さらさ)と傘を差し出した大学生(ふみ)の物語。
「うち、来る?」 その一言から、二人の共同生活は始まった。
世間が向ける「誘拐犯」と「被害女児」というレッテルとは裏腹に、そこには二人だけの穏やかでかけがえのない日々があった。
しかし、その生活は長くは続かず、二人は引き裂かれてしまう。
それから15年後。 偶然の再会を果たした更紗と文。かつての「事件」は、大人になった彼らにも深く刻みつけられ、周囲の視線や憶測に晒され続ける。
それぞれの孤独を抱え、社会の「普通」に馴染めない二人が再び心を通わせようとするとき、彼らの関係は、そして周囲は、どのように変わっていくのだろうか。
『流浪の月』レビュー・感想

「流浪の月」を読んでみて
心にずっしりと残ったのは、「普通」とは何か、「正しさ」とは誰が決めるのかという問いでした。
更紗と文、二人の関係は、世間一般の目から見れば「異常」であり、「許されない」ものかもしれません。
しかし、彼らが互いに寄り添い、慰め合う姿は、私たちが普段「愛」と呼ぶものと何が違うのだろうかと、何度も考えさせられました。
特に印象的だったのは、周囲の人々の無自覚な「善意」や「正義感」が、いかに二人を追い詰めていくかという描写です。
私たちは時に、自分の価値観や常識を疑うことなく、他人を断罪してしまうことがあります。
しかし、この物語は、そうした一方的な視点の危うさを鋭く突きつけてきます。
凪良ゆうさんの繊細な筆致は、登場人物たちの心の機微を丁寧に描き出し、読者は彼らの息遣いや痛みを肌で感じるかのようです。
読み進めるうちに、更紗と文、どちらの視点にも感情移入し、彼らの選択や感情の揺れ動きに心が締め付けられました。
単純な「恋愛小説」という枠には収まらない、人間の孤独や社会との関わり方、そして愛の本質について深く問いかける作品です。
著者「凪良ゆう」さんについて
『流浪の月』の著者、凪良ゆうさんは滋賀県大津市出身の作家です。
2006年にBL(ボーイズラブ)作品でデビューでデビュー。
2019年に『流浪の月』を刊行し、2020年に本屋大賞を受賞、2023年に『汝、星のごとく』で2度目の本屋大賞を受賞しました。
凪良ゆうさんは、児童養護施設で育った経験を活かし、人間の深い愛と絆を描く作品を多数発表しています。丁寧な文章と繊細な心理描写が特徴で、多くの読者の心を震わせる作品を生み出しています。
『流浪の月』を読んだ最後に
『流浪の月』は、読み終えた後も、心の中に静かな波紋を残し続ける物語です。
誰にも理解されないかもしれないけれど、確かにそこにある絆。
社会の型にはまらない生き方。
そして、世間の声に惑わされず、自分にとって本当に大切なものを見つめ直すことの重要性。
この物語は、現代社会で生きづらさを感じている人、誰にも言えない秘密や孤独を抱えている人、そして「普通」という言葉に疑問を感じたことがある全ての人に、深く響くものがあるのではないでしょうか。
読み終えた今、あなたは誰に共感し、どのような感情を抱くでしょうか。

流浪の月
(★4.4)
(オーディブル聴き放題 / Kindle¥720 / 楽天¥814)