『深淵のテレパス』 上條一輝さん著|あらすじ・レビュー

『深淵のテレパス』 上條一輝さん著|あらすじ・レビュー

深淵のテレパス

(★4.4)
(オーディブル聴き放題 / Kindle¥1439 / 楽天¥1650)


上條一輝さんのミステリー小説『深淵のテレパス』の書評です。

深淵のテレパス』について

『深淵のテレパス』は、2024年 東京創元社から発行された上條一輝さんの長編ミステリー小説。

「このホラーがすごい!2025年版」第1位、「ベストホラー2024(国内部門)」第1位、「第1回創元ホラー長編賞」受賞の3冠達成!!

『深淵のテレパス』登場人物

芦屋晴子(あしや はるこ):「あしや超常現象調査」代表 YouTubeで超常現象の調査動画を配信

越野草太(こしの そうた):主人公 晴子と同じ映画宣伝会社に勤務、調査動画の撮影・補助を担当 

高山カレン:怪奇現象の依頼者

桐山楓:大隈大学オカルト研究会所属の2年生

犬井椿(いぬい つばき):晴子の古い知り合い テレパシー送受信などの超能力を持つ

倉元浩(くらもと ひろし):晴子の知人で探偵・元警視庁捜査官

『深淵のテレパス』あらすじ

「変な怪談を聞きに行きませんか?」

会社の部下に誘われた大学のオカルト研究会のイベントで、とある怪談を聞いた日を境に高山カレンの日常は怪現象に蝕まれることとなる。

暗闇から響く湿り気のある異音、ドブ川のような異臭、足跡の形をした汚水――あの時聞いた”変な怪談”をなぞるかのような現象に追い詰められたカレンは、藁にもすがる思いで「あしや超常現象調査」の二人組に助けを求めるが……

選考委員絶賛、創元ホラー長編賞受賞作。

Amazonより引用

『深淵のテレパス』は、PR会社で働くキャリアウーマンの高山カレンは、部下に誘われ、とある大学のオカルト研究会が主催する怪談イベントに参加します。

そこで彼女は、一人の女子学生から、まるで自分だけに語りかけるような奇妙な怪談を聞かされます。

その日を境に、カレンの日常は静かに、しかし確実に侵食されていきました。

暗闇から聞こえる「ばしゃり」という湿った音、どこからともなく漂うドブ川のような異臭、そして床に残された汚水の足跡…。

それは、あの夜に聞いた怪談をなぞるかのような、不気味な現象の数々でした。

精神的に追い詰められたカレンが藁にもすがる思いで助けを求めたのは、「あしや超常現象調査」という二人組。

彼らはYouTubeで活動する現代的な調査員で、カレンに起こる怪奇現象の謎を解明すべく動き出します。

しかし、調査を進めるうちに、この怪異が単なる心霊現象ではなく、戦時中の恐ろしい人体実験にまで遡る、根深い闇に繋がっていることが明らかになっていくのです。

『深淵のテレパス』レビュー・感想


ホラーとミステリーの絶妙な融合

本作の最大の魅力は、読者の肌にまとわりつくような不気味なホラー描写と、知的好奇心をくすぐるミステリー要素が見事に融合している点です。

物語序盤、主人公カレンの身に次々と起こる怪奇現象は、日常が崩れていく恐怖を丁寧に描き出しており、思わずページをめくる手が止まってしまいました。

そして、「あしや超常現象調査」の二人が登場してからは、物語は一気に謎解きの様相を呈します。

オカルト現象を頭ごなしに信じるのではなく、科学的な視点や論理的な推理を交えながら、怪異の正体に迫っていく過程は非常にスリリング。呪いや超能力といったオカルト要素が、リアリティのある調査によって解き明かされていく展開は、まるで上質なミステリー小説を読んでいるかのようでした。

魅力的なキャラクターたち

主人公のカレンはもちろん、調査にあたる「あしや超常現象調査」の越野草太芦屋晴子のコンビが非常に魅力的です。

冷静沈着で論理的な越野と、一見飄々としていながらも鋭い洞察力を持つ芦屋。

この二人の軽妙なやり取りが、物語の重苦しい雰囲気を和らげ、読者をぐいぐいと引き込んでくれます。

彼らの存在が、単なる怖い話で終わらない、エンターテイメント性の高い作品へと昇華させていると感じました。

じわじわと、でも確実に怖い

派手な恐怖演出で驚かせるというよりは、日常に潜む違和感や、正体不明の存在がすぐそばにいるような感覚をじわじわと増幅させていくタイプの怖さです。

特に、音や匂いといった感覚に訴えかける描写は秀逸で、読んでいるこちらも自分の部屋の暗がりが気になってしまうほどでした。

ホラー小説が好きな方はもちろん、「怖すぎるのは苦手だけど、少しゾクッとしたい」という方にもおすすめできる一冊です。

著者「上條一輝」さんについて

『深淵のテレパス』の著者、上條一輝さんは1992年生まれ、長野県出身のWebライターです。

2024年に「深淵のテレパス」(応募時タイトル「パラ・サイコ」)で創元ホラー長編賞を受賞し作家デビュー。

2025年に第2作『ポルターガイストの囚人』を刊行

「ホラー作家」として、リアリティと現代科学を重視した作風で、“ホラー新世代”として注目されている気鋭の作家です。

『深淵のテレパス』を読んだ最後に

『深淵のテレパス』は、ただ怖いだけではない、物語としての完成度が非常に高い作品でした。

丁寧に張り巡らされた伏線が、終盤にかけて見事に回収されていく様は圧巻です。

読み終わった後には、恐怖と共に、一つの壮大な謎を解き明かしたような満足感を得られることでしょう。

ホラー小説の新たな傑作として、今後多くの人に語り継がれていくであろう一冊。

あなたも「深淵」を覗き込んでみてはいかがでしょうか?

きっと、その奥深い魅力の虜になるはずです。

深淵のテレパス

(★4.4)
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