
新世界より(上)
(★4.3)
貴志祐介による『新世界より』は、現代から千年後の未来を舞台にした長編ファンタジー小説です。
超能力を持つ人間が支配する未来社会を舞台に、四人の少年少女が真実を追求していく冒険譚として始まりますが、やがて物語は予想外の方向へと展開していきます。
その緻密な世界観、複雑な人物描写、そして衝撃的なストーリー展開は、多くの読者を魅了してきました。
本記事では、この傑作の魅力を余すところなくお伝えします。
『新世界より』について
『新世界より』は、2008年から2010年にかけて『月刊少年アシスタント』に連載された作品を加筆修正し、2011年に新潮社から刊行された長編小説です。
全4巻からなる本作は、冒険ファンタジーとしての面白さと、社会SF的なテーマ性を兼ね備えた傑作として高く評価されています。
独特の世界観と予測不可能なストーリー展開で、読者を最後まで魅了し続ける傑作です。
『新世界より』登場人物
渡辺早季:主人公 父は町長、母は図書館司書
朝比奈覚:早季の幼馴染
秋月真理亜:早季の親友
青沼瞬:早季の幼馴染 優れた呪力を持つ少年
伊東守:早季の幼馴染
『新世界より』あらすじ

1000年後の日本。
豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。
周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。
「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。
念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。
Amazonより引用
千年後の日本。超能力(呪力)を持つ人間たちが暮らす理想郷「神栖」の町に、四人の少年少女がいます。彼らは平和で豊かな社会に生まれ育ちました。
しかし、彼らが自分たちの世界について詮索し始めたとき、次々と謎が明かされていきます。
大人たちが隠していた真実、自分たちの社会の本当の姿、そして自分たち自身の秘密。
一見すると理想的に見える社会の裏側に隠された、人間本来の葛藤や本質と向き合わせられることになります。
冒険を通じて世界の真実へと近づいていく少年少女たちは、やがて予想だにしない運命へと導かれていくのです。
『新世界より』レビュー・感想

『新世界より』は、一度読み始めたら止められない魅力に満ちた作品です。
少年少女による冒険譚という入り口から始まりながら、次第に社会の根本的な問題へと物語は深化していきます。
特に印象的なのは、作者がこの物語を通じて問いかける「理想と現実」「自由と秩序」「個と群」といったテーマです。
これらは単なる冒険譚の付け足しではなく、物語の骨子をなしており、その葛藤が物語全体に深みをもたらしています。
世界観の設定の見事さも特筆すべきです。
千年後の日本という舞台設定から、その社会における物理法則、道徳観、社会構造に至るまで、すべてが緻密に構築されており、読者をその世界へと引き込みます。
予想を裏切られ続ける展開も、本作の大きな魅力です。
読者の予想の先を行く物語の展開は、読んでいて次々と予想が覆され、最後まで物語に引き込まれることになります。
著者「貴志祐介」さんについて
『新世界より』の著者、貴志祐介(きしゆうすけ)さんは、1959年大阪府生まれの小説家です。
1996年『十三番目の人格 ISOLA』で「第3回日本ホラー小説大賞」佳作を受賞し、作家デビュー
1997年『黒い家』で「第4回日本ホラー小説大賞」を受賞
貴志祐介さんの作品は、心理的な深みと社会的な洞察力を兼ね備えたミステリーとして、多くの読者から支持されています。
『新世界より』を読んだ最後に
『新世界より』を読了した後、多くの読者は深い余韻に浸ることになります。
冒険譚として面白いだけにとどまらず、社会とは何か、人間とは何かを深く問い直させられるからです。
この作品は、単なるエンターテインメント作品ではなく、現代社会における人間関係、道徳、そして社会構造に対する一つの問題提起として機能しています。
読んだ後、私たちが生きている社会を改めて見つめ直すきっかけになるかもしれません。
ぜひ手に取って、千年後の日本で起こる冒険と、その先に隠された真実をご体験ください。
きっと、あなたの物語体験を大きく変える一冊になるはずです。

新世界より(中)
(★4.4)

新世界より(下)
(★4.5)

