『スピノザの診察室』 夏川草介さん著|あらすじ・レビュー

『スピノザの診察室』 夏川草介さん著|あらすじ・レビュー

スピノザの診察室

(★4.6)
(Kindle¥1,683 / 楽天¥1,870 / オーディブル聴き放題)


夏川草介さんの小説『スピノザの診察室』の書評です。

現役医師として命と向き合い続けた著者が到達した、「人の幸せ」とは。

『スピノザの診察室』について

『スピノザの診察室』は、2023年に水鈴社より発表された夏川草介さんの小説

380万部のベストセラー『神様のカルテ』を凌駕する、新たな傑作の誕生 「2024年本屋大賞」4位

『スピノザの診察室』登場人物

雄町哲郎(マチ先生):主人公 38歳の内科医 京都の原田病院勤務 内視鏡の名手

南茉莉(まつり):洛都大学消化器内科の若手女医 研修で原田病院にやってくる

花垣辰雄:洛都大学准教授 哲郎の先輩医師

『スピノザの診察室』あらすじ

その医師は、最期に希望の灯りをともす−−。

20年間、医療の最前線で命と向き合い続けた著者が描く、祈りと希望にあふれた感動の物語。

現役医師でもあるベストセラー作家が迫る、「人の幸せ」とは。
340万部のベストセラー『神様のカルテ』を凌駕する、新たな傑作の誕生。
2024年本屋大賞ノミネート作!

Amazonより引用

夏川草介さんの『スピノザの診察室』は、「マチ先生」と呼ばれるとある内科医の感動の物語です。

雄町哲郎(マチ先生)は京都の町中の地域病院で働く内科医。

30代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師でした。

哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込みます。

『スピノザの診察室』レビュー・感想


『スピノザの診察室』は、医療小説であると同時に、一つの哲学的問いを読者に投げかけてきます。それは、「人の心を救うとはどういうことか?」という問いです。

夏川草介さんは『神様のカルテ』シリーズでも知られるように、医師としての現場感と人間に対する温かなまなざしを持つ作家です。

本作でもその筆致は健在で、登場人物一人ひとりの思いや揺らぎが丁寧に描かれています。

重たいテーマを扱いながらも、決して説教臭くならず、静かに読者の内面へ染み込んでくる。そのバランス感覚が素晴らしいです。

現代の忙しさに追われ、自分の“心”を見失いかけている人にこそ、じっくり味わってほしい一冊です。

著者「夏川草介」さんについて

『スピノザの診察室』の著者、夏川草介(なつかわそうすけ)さんは、1978年大阪府生まれの小説家です。

信州大学医学部卒業後、⻑野県にて地域医療に従事
2009年『神様のカルテ』で「第10回小学館文庫小説賞」を受賞しデビュー
同書は2010年「本屋大賞」第2位となり、映画化される

他の著書に、世界数10カ国で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の最前線に立つ現役医師である著者が自らの経験をもとに綴り大きな話題となったドキュメント小説『臨床の砦』など

『スピノザの診察室』を読んだ最後に

『スピノザの診察室』を読み終えた後、ふと空を見上げたくなるような静けさが残りました。

「生きるとは何か」「他人とどう向き合うべきか」そんな根源的な問いに対し、直接の答えは与えられないけれど、考えるヒントを手渡してくれる作品でした。

医療や哲学に興味がある人はもちろん、日々の中で心が少し疲れていると感じる人にもおすすめします。

自分自身の心と、静かに語り合う時間を与えてくれる、そんな一冊です。

スピノザの診察室

(★4.6)
(Kindle¥1,683 / 楽天¥1,870 / オーディブル聴き放題)